「薬」は病気を治す手助けをしてくれるものです。
病気になれば医者にかかり、場合によっては薬を処方してもらうことも少なくないでしょう。
しかし、「どの程度の不調を感じれば、病院にかかるべきなのだろう」という線引きはなかなか難しいのではないでしょうか。
「念のため」と、とりあえず病院に行っておく人もいれば、
ぎりぎりまで我慢して症状が悪化してしまう場合もあります。
実際には、軽い症状はひとまず市販の医薬品で対処し、それでも良くならなければ病院に行く、と使い分けている人が多いのではないでしょうか。
この「軽い症状は市販薬で対処」している人が税金を優遇される仕組みが今年の1月からスタートしました。
「セルフメディケーション税制」という制度です。
医療費の増加が深刻な日本
日本が世界一の長寿国であることは、ご存知の方も多いと思います。
世界保健統計2016によると、日本人の平均寿命は83.7歳。
平均寿命が52歳程度だった戦後まもなくと比較するともちろん、私が生まれた1990年と比較しても男女ともに5歳ほど延びています。
しかし、自立した生活ができる「健康寿命」は74.9歳であり、おおよそ9年間ほど、入院していたり、介護などを受けなければ生きていくことができない期間があります。
さらに、75歳以上の高齢者の4人に1人に、7種類もの薬が処方されているという現状があります。
人が生涯で使う医療費は、おおよそ2,400万円ですが、そのうちの約半分を70歳以降に使っているという結果にも納得がいきます。(厚生労働省調べ)
2015年度の概算医療費が41.5兆円と過去最高に達したことも話題になりました。
高齢社会を迎えるうえでこの「医療費」が増え続けていくことが日本の財政を圧迫することも問題ですが、過剰な延命治療などにより高齢者の終末期が本人にとって望ましくないものになっているという現状もあります。
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制とは、普段からきちんと健康診断などを受けている人を対象に、特定の成分を含んだ医薬品の購入額に応じて税金を控除するという制度です。
日頃から自分の健康管理に気を配り、症状が軽度なうちに、市販薬をうまく使うことで重症化を防ぎ、健康維持を促進するものです。
実はこれまでの医療費控除制度は、家族で10万円を超えないと適用がありませんでした。
そのため申告が少なく、あまり活用されていませんでした。
そこで、健康維持や疾病予防にもっと多くの人に取り組んでもらうため、「セルフメディケーション税制」が始まったのです。
かぜ薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬 、肩こり・腰痛・関節痛の貼付薬などの「特定成分を含んだスイッチOTC医薬品」と呼ばれる医薬品が対象です。
厚生労働省の「スイッチOTC医薬品有効成分リスト」を参照するか、以下のマークを目印にすると良さそうです。
レシートにも目印がついてあります。
対象の医薬品をドラッグストアなどで一年あたり1万2千円を超えて買うと、8万8千円を上限として税の控除が受けられます。
扶養家族の分も合算できるので、家族で声をかけあってレシートを保管しておくのがいいでしょう。
対象となる人
所得税や住民税を納めていて、日頃から健康維持や疾病予防のために以下の検診などを受けている人が対象です。
- 特定健康診査
- 予防接種
- 定期健康診断
- 健康診査
- がん検診
会社で健康診断を行っている場合は、それでもOKです。
いつから使えるのか
2017年分の確定申告から適用できます。
(2017年分の確定申告の一般的な提出時期は、2018年2月16日から3月15日までです。)
つまり、今レシートを残しておけば、来年の確定申告時に使えるということです。
医療費控除と併用できない点に注意
注意しなければならないのが、現在の医療費控除とは併用できない点です。
どちらで申告したほうが家計にとってお得か、計算してみる必要があります。
▼こちらのサイトで、控除額をシュミレーションできます▼
知ってトクする セルフメディケーション税制 – 日本一般用医薬品連合会
ちなみに、医療費控除を使う場合でも、治療や療養の目的で購入したものであれば、セルフメディケーション税制対象品目を計算に含めることができます。
自分の健康は自分で守る時代
財政問題などで、医療費制度が今よりも患者にとって負担の大きい制度になる可能性は十分にあります。
また、従来の医療とは違う新しい医療もどんどん出てきています。
これまでのように、「とりあえず病院」に行き、お医者さんの言われるがままに治療を受けるという時代は終わりつつあります。
自分の健康状態を把握し、健康をできるだけ維持するように努めると同時に、
税制や治療法などを含めた情報を取り入れて、主体的にうまく不調に対処する力が私たち誰しもに求められる時代がすぐそこに来ています。
とはいえ、無理に我慢して重症化してしまわないよう、気になる症状は医師に相談するほうがよいでしょう。