腸内フローラは、予防医学の主人公になりうるかもしれない

腸内フローラ

いまから2年以上前の2015年2月22日、NHKスペシャルで「腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー」という番組が放送されました。
大変な反響を呼んだそうですが、そのときの私はまだ健康情報に疎く、「予防医学」「統合医療」などという言葉さえ知りませんでした。

しかし最近、「腸内フローラ」に関する記事を書くことになりそうだと色々勉強していたら、その秘めたる可能性に驚くことになりました。

私は幼少期から、ずいぶん深刻な便秘に悩まされてきました。
食物繊維も摂るし、水もよく飲む。適度な運動もする。
しかし、ひどい便秘と下痢を繰り返す体質でした。

他にも私には様々な不調がひっきりなしに訪れます。
(参照:「「不調」はどの程度受け容れるべきか。アトピー、疲れやすさ、不眠、うつ傾向、便秘など」)

そこで「腸内フローラ」です。
便秘だけではなく、私のこれまでの不調をすべて治してくれる可能性があるかもしれない、と思ったのです。

私が腸内フローラを理解するにあたり、まず入り口としてこの本が大変いい教科書になりました。


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「腸内フローラ」とは

腸内フローラ

私たちの腸には、およそ200種類、100兆個もの腸内細菌がいると言われています。
腸内細菌は人間の食べるものをエサとして、腸の働きを助けてくれています。

いえ、「助ける」などという補助的なものではないかもしれません。
知れば知るほど、私たちの体は「腸内細菌」にプロデュースされていると言っても過言ではないように思えます。

腸内細菌は、腸の中に彼らの「生態系」を作り上げていて、それを「腸内フローラ」と呼びます。
「フローラ」はお花畑に近い言葉であり、様々な最近が腸の中で生息している様子が咲き乱れる花のように見えることからそう呼ばれます。

腸内細菌は奥深い

腸内細菌

腸内細菌は「新たな臓器」と呼ばれるほど、私たちの体に密接にかかわっています。
ただ腸内に住み着いている細菌という以上に、病気を治したり、逆に病気を引き起こしたり、脳や精神面にまで大きな影響を及ぼしうるものなのです。

その世界は、とても一本の記事で説明できるようなものではありません。
今後、腸内フローラを専門に研究する医師のお話も聞きながらお伝えしていきたいと思います。

今回の記事では、そのおおまかな概念を書くことに留めておきます。

腸内フローラに期待される効用

腸内フローラの研究はまだまだ発展途上であり、謎の多い分野でもあります。
けれどその多種多様な細菌を調べた研究者たちが発見しただけでも、多くの効果が期待できると注目を浴びています。

肥満解消

肥満解消

極端なダイエットに走る女性が多い一方、肥満に悩む人も増えています。
肥満は、糖尿病などのリスクをはらんでおり、将来生活習慣病になりやすいとも言われているため肥満解消が病気予防に効果的です。

解決の鍵は、「太りにくい人」の腸にありました。
同じ量を食べているのに痩せている人の腸には「短鎖脂肪酸」という物質が多くあったのです。

野菜などの食物繊維を多く摂ることで、腸内細菌が短鎖脂肪酸を生み出しやすくなります。

肌の若返り

肌の若返り

多くの女性にとっての関心ごとに「肌の若返り」が挙げられます。

実は、「エクオール」という物質に肌の若返りがあることが実験でわかりました。

「エクオール」は、大豆イソフラボンを腸内細菌が変化させることで生まれます。
大豆イソフラボンが美容にいいと聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。

「エクオール」は、大豆イソフラボンの効果をもっと高くした物質とも言えます。

生活習慣病

生活習慣病

生活が豊かになるにつれ、食生活の乱れや運動不足による生活習慣病の存在が深刻になりました。

がん

日本人の死因1位の「がん」はその代表格であり、日々その克服に医療の現場が奮闘しています。

「がん」の治療は患者の体に大きな負担がかかるばかりか、費用も莫大になります。
「がん」は予防が何よりも大切だということは、もはや医療業界の常識です。

実は、腸内細菌が作り出す「エクオール」ががんを予防するかもしれないと期待されています。
一方で、がんを誘発する「アリアケ菌」というのも発見され、これを増やさないようにすることで、双方向からがんを予防できるかもしれないのです。

動脈硬化

また、日本人の死因2位の心臓病と3位の脳卒中の原因となる「動脈硬化」にも腸内細菌がかかわっていることがわかってきました。
細かい説明は割愛しますが、「TMA」が発生しにくい腸内フローラにすることが大切だそうです。

糖尿病

生活習慣病といえば、糖尿病を外して考えることはできません。
日本でも患者数は増えていますが、タイなどの新興国ではもっと深刻な事態になっているようです。

腸内細菌の出す「短鎖脂肪酸」という物質が2型糖尿病に効果を発揮すると、研究が進められています。

アトピー・アレルギー

アトピー・アレルギー

アトピーやアレルギーは、免疫細胞が暴走することで起きます。
本来、免疫はウイルスや病原菌などから体を守るためにありますが、これが過剰に働いてしまうことがあります。

免疫細胞の「T細胞」という細胞が成長する過程で「短鎖脂肪酸」が働きかけると、「Tレグ」という暴走を止めてくれる細胞に変わります。

「短鎖脂肪酸」は、野菜などの食物繊維を腸内細菌が食べることで生まれる物質です。

うつ症状

うつ症状

「腸は第二の脳」とも言われるように、腸と脳は非常に密接にかかわっています。

腸と脳は「迷走神経」と呼ばれる自律神経の一種でつながっていて、迷走神経は私たちの気分や感情に大きな影響を及ぼします。
腸内細菌は、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を作ることで、腸から脳に様々な信号を発信します。

腸内細菌を摂取することで、うつ症状の改善に役立てることができるか、今研究が進んでいます。

近い将来、「こころの病」の領域にも腸内細菌が登場するかもしれません。

腸内フローラの歴史とこれから

腸内フローラの歴史とこれから

腸内フローラは人類が誕生するもっと昔から、生命体と共生し、共進化してきました。
両者は「互恵的利他主義」とも言える関係で、助け合って生きています。

腸内フローラの可能性に関する研究は、まだまだ始まったばかりです。
しかしその可能性に世界じゅうの人たちが注目しています。

これから「腸内フローラ」がどんな顔を見せてくれるのか、期待が高まります。

(ライター:陽月深尋)

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