運動せずに脂肪燃焼? ミトコンドリアの研究に注目

人間がマラソンを走り切るには、糖のエネルギーだけでは足りません。それでも走り切れるのはミトコンドリアが作り出したエネルギーが存在しているからです。糖ではなくミトコンドリアを上手に活用すれば、持久力を伸ばすことができます。

しかし、最近ではマラソンなどの運動をしなくても、ミトコンドリアを活性化し脂肪燃焼することができるのでは? と研究が進められています。今回は、プラセンタ特別講演会で紹介された「ミトコンドリアの研究」についてお伝えします。

燃費のいいエネルギー源「ミトコンドリア」

人間の体は、糖がエネルギーになっているため、糖が入ってこないと体のサイクルが低下します。しかし、糖以外にもミトコンドリアが作り出すエネルギーの存在があるから、マラソンランナーは長距離を完走できるのです。ミトコンドリアは、酸素を吸収し二酸化炭素を排出し、エネルギーの元になるようなものを作ります。ミトコンドリアは燃費が良く、酸化ストレスの少ないエネルギー源として注目されています。

ミトコンドリアを活性化させる研究

長時間のスポーツを行ったときに肝臓内のグリコーゲンが枯渇し、急激に体が動かなくなることがあります。これは「ハンガーノック(Hit the wall)」と呼ばれるエネルギー切れのような状態です。こういった事態に陥らないためにアスリートたちは、「グリコーゲン・ローディング(カーボ・ローディング)」を行っています。

大会前の1週間前から食事中の炭水化物量を減らし、大会の数日前になってから炭水化物をたくさん含む食品をいっきに摂取します。筋肉中のグリコーゲンを減らしてから、炭水化物を増やし運動量を減らすと、筋肉中のグリコーゲンが増加して蓄えられるからです。その結果、大会当日に力を発揮することができるといいます。

この方法も有効ではありますが、運動しなくても同じ効果が得られないかと研究が進められています。そして、「PPARδ」の性質が着目されるようになりました。節約遺伝子のひとつであるPPARδは、主に骨格筋に存在する物質で、継続的な運動によって発現が促されます。抗肥満作用をもち、インスリン抵抗性の改善やミトコンドリアの増加の役に立ちます。

運動しなくても脂肪燃焼できる?

PPARδは、肝臓に蓄えられた糖質を利用せずに、脂質代謝を促進することで持久力を向上させます。つまり、じっとしていても糖分を使わずに脂肪を燃やすことができるのです。実際に、PPARδを投与したトランスジェニックマウスは体力が強くなりました。

通常、脂肪を燃焼させるには有酸素運動が必要とされていますが、PPARδを元気にする化学物質「GW501516(GW)」は運動しているときだけでなく、安静時でも糖質代謝を抑え脂質代謝を促すことができるため、低血糖を防いで動けなくなる状態(エネルギー切れ)を避けることができます。

現在の課題と今後の展望

エネルギーを溜め込むのか、燃焼するのかの分岐に関わる物質があります。そして、「SUMO-KLF5」は溜め込む働きのスイッチですが、PPARδは燃焼系に働くスイッチと考えられています。しかし、PPARδをダイエット系に活用できると断言するのは難しいのが正直なところです。

これらの情報を踏まえてプラセンタを用いて実験を行ったところ、エネルギーを溜め込む反応と、燃焼系に働く反応の両方が見られたからです。具体的な物質の特定はできていませんが、PPARδを与えればいいという問題ではなさそうです。今後の方向性として、燃焼系のスイッチのみに働く成分を特定したり、スイッチの監視役のような成分を探したりすることで研究を進めたいと考えます。

また、ダイエットというと「痩せること」「細くなること」を意識する人もいらっしゃると思いますが、むやみなダイエットは体調不良を招きます。急激に体重を落とせば、リバウンドしてしまう可能性が高いですし、体脂肪ではなく筋肉量が低下してしまうこともあります。目指すなら健康的なダイエットが理想です。健康美を意識したダイエットなら、きっと健康を損なうことなく、生き生きとした生活を送れるでしょう。

(ライター:南條祐弥)

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