ワルトンジェリーとは?進む臍帯の研究

プラセンタとは「胎盤」という臓器のこと。受精卵が着床後に、細胞分裂してできるものです。プラセンタには、蛋白質やアミノ酸、ビタミン、ミネラル類、各種の酵素など人間を構成するほとんどの成分が含まれています。これまで、「胎盤(プラセンタ)」に関する研究データをたくさん紹介してきました。

しかし、「臍帯」についての研究も進められているのをご存じでしょうか? 今回は、プラセンタ特別講演会で紹介された「臍帯の研究」についてお伝えします。

臍帯にある「ワルトンジェリー」とは?

「臍帯(Umbilical cord)」は、胎盤と胎児を繋ぐへその緒のことです。胎盤から栄養を供給して胎児の老廃物を戻すパイプ役を担っている臍帯には、胎盤にはない細胞が含まれています。

臍帯を輪切りにすると臍動脈が2本、臍静脈が1本あり、栄養や老廃物が行き来しています。また、「ワルトンジェリー(Wharton’s jelly)」という組織があり、どの臓器にもなりうる幹細胞が豊富に含まれています。幹細胞の分化誘導が進む過程には、どの臓器になるか進路を意識し始める時期があり、この時期の細胞を各種臓器の「前駆細胞」と呼びます。

前駆細胞には、「MHC(-/-)」といった個体識別の目印があります。赤血球の血液型がABOで分けられているように、白血球にも血液型のようなものがあります。そういった目印の出ていない幹細胞が多く含まれているのもワルトンジェリーの特徴です。

再生医療への活用

ワルトンジェリーは、再生医療に活用できると期待されています。実際に自分の幹細胞を脂肪から取り出して培養し、幹細胞のみを血管を通して戻していくという治療が既に行われつつあります。

これは、自己幹細胞(自分の体から採取した幹細胞)を増やすというものです。再生医療は、リスクに応じて「第1種」「第2種」「第3種」の三段階に分けられています。自分の幹細胞を増やして体内に戻すものは第2種に当てはまり、日本でも認められている治療です。

しかし、他人の幹細胞を用いる第1種の治療はまだ認められていません。日本では、iPS細胞のみが第1種の治療として認められています。iPS細胞ならば、他人の細胞を使用する方法も認められているのです。まだ研究段階ではありますが、ワルトンジェリーの幹細胞は天然のものであるため、iPS細胞を活用するよりもリスクが少ないという考え方もあり、注目されています。

今後の再生医療がもっと進歩すれば、治療の幅が広がります。病を抱える多くの人の選択肢が増える可能性もおおいにあるでしょう。臍帯の研究がどのように進むか、目が離せません。

(ライター:南條祐弥)

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