賢い取捨選択で、医療をよりよく。Choosing Wiselyとは?

過剰医療をなくす

人類がほかの動物と違って優れている点は、「世代を超えて経験値を積み重ねられること」にあると言えるかもしれません。

おかげで私たちの文明は発展を続け、科学技術は進歩し、生活は豊かになりました。
それに伴って、少なくとも先進国では高度な医療を多くの人が受けられる時代になっています。

けれど、現代人は健康そのものかというと、そうも言えないのです。

生活習慣病などの新しい疾患の登場もありますが、実は「過剰医療」も健康を損なう要因になっているかもしれません。

Choosing Wiselyとは

Choosing Wiselyとは

Choosing Wisely(賢い選択)とは、不必要な投薬や検査を含む医療行為をなくすことにより、医療の質の向上を図ろうとする取り組みです。

アメリカの内科専門医認定機構財団が始めたキャンペーンで、今ではカナダ、オーストラリアなど先進国に広がりつつあります。日本では取り組みが遅れていました。

近年ようやく、日本でもこの考え方を取り入れようとする動きが強まり、厚生労働省による医療制度改革提言でも言及されました。
過剰医療を適正化することで、医療の質を上げられるどころか、これから大きな問題となる医療費の増大も抑えられる可能性があります。

日本は不要な医療だらけ

日本は不要な医療だらけ

日本の薬消費量は世界一だと言われています。

風邪をひいた、腰が痛い、頭痛がする。
少しでも不調を感じたら病院に駆け込むのが、日本人の特徴と言えそうです。

もちろんそれ自体が悪いわけではありません。
ただ、自然治癒力に任せておけば治った症状が、投薬によって悪化する可能性もあるため、本当に薬で症状を抑え込む必要があるのかどうか見極めることが大切です。

例えば、「風邪に効く薬は存在しない!? 医師が風邪薬を処方する本当の理由」でも紹介したように、抗生物質では風邪は治りません。

たいていの場合、風邪は栄養を摂って安静にしていれば自然に治ります。
無理に薬で咳を止めたり熱を下げることは、本来なら体から排出されるべきだった菌を体内に残してしまうこともあるのです。

その他にも、十種類以上の薬を併用していた女性が、医師の指導のもと薬を二種類に減らしたところ、健康を回復したという話があります。
薬には副作用があり、何種類も服用していると臓器障害などの深刻な事態にもなりかねません。

CT・MRIの人口当たり台数世界一

CT

転んで頭を打ったら、とりあえずCTを撮っておこう。
膝が痛いから、CTで異常がないか見ておこう。

このように、患者がカメラで写真でも撮るような気軽さでCTスキャンをすることが多くあります。
何も写っていないことを確認して安心するのはいいのですが、CTスキャンによって「被ばくする」ということをあまりに軽く見ている人が多いのも事実。

東日本大震災の原発事故以降、放射線に対する人々の意識が少し変わったという見方もあります。
けれど、人口当たりのCT・MRIの台数が世界一という事実から見るに、日本人は必要以上に検査をしていると指摘する専門家もいます。

また、高額な機械購入費用を回収するために、医師が積極的に不必要な治療を行っていることもあるとさえ言われています。

医師・患者双方の意識改革が必要

医師・患者双方の意識改革

患者にとって不必要な、悪くすれば害になりうるような治療を施す医師は論外ですが、中にはモンスターペイシェント(患者)の存在が不要な治療を促しているケースもあります。

投薬や検査は必要ないと判断したあとに万が一患者の容態が悪化したとしたら、患者に訴えられかねません。
医師からすれば、一応検査や投薬などの処置を施していれば、責任は果たしたことになるため、少し過剰であっても処置をする医師は少なくないのです。
よほど自分の腕に自信がない限り、投薬や検査は不要だとは断言できません。

そこで、患者のほうの意識改革も大変重要になります。
過剰な投薬や検査にはかえって悪影響を及ぼす危険もあることを認識し、病院に頼りすぎない健康管理を心がけましょう。

(ライター:陽月深尋)

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